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【事業報告】海×先生~「知る・つくる・実施する・振り返る」海のPBLデザイン

公開日:2020.01.20

【第3回海を学ぼうスクールin中野区~海と日本PROJECT~】

LAB to CLASS教材が大事にしていることや指導方法を知り、加えて海を題材としたPBL(project baced learning)デザインの基礎を学び、これらを元に実際に参加者独自の海洋学習プログラムをつくって、子どもたちへ実施し振り返るワークショップ<海×先生>を行いました。

参加者は、学校の先生、春から教員になる大学生、NPOやNGOの方、海洋環境問題に関心のある高校生、台湾から来日している環境教育フリーランスの方など多様なメンバー。

講義やLAB to CLASS教材体験の後、4つのグループに分かれて、それぞれが伝えたいテーマを掘り下げ、LAB to CLASS教材の手法を活かしながら子どもたちがわくわくするプログラムを作り上げました。そしてそのプログラムを、同時開催していた「海の生きものKIDSワークショップ」終了後の“お楽しみプログラム”として子どもたちに実施しました。

  • テーマ:LAB to CLASS教材を活かした海洋学習プログラムの作成
  • 対象:教育関係者 18名
  • 会場:新渡戸文化学園(東京都中野区)
  • 講師:山藤旅聞氏(学校法人 新渡戸文化学園)、川端潮音(特非 海の環境教育NPO bridge)
  • 実施時間:約7時間(9:00-17:00)
  • 内容: PBL(project baced learning)デザインの作り方、LAB to CLASS教材体験、海洋学習プログラム作成と実施(対象:小学生約20名/45分間を想定)

活動の様子

 ◎山藤旅聞氏による講義

「PBL(project baced learning)やCBL(challenge baced learning)はなぜ必要なのでしょうか? 学校現場でこれらは本当に必要でしょうか?・・・その答えは、未来を想像すると明確になります。IT化が進み、これまでの教育で必要とされてきた知識の暗記や、単純作業を身につけることが不要になった時、人間ができることは“自分で考え、選び、行動すること”。だから今、教えるのではなく“共につくる”教育の場が必要だと考えています。」

◎LAB to CLASS教材の体験

サンゴ礁ジグソーパズル餌の餌の餌は何?》の2つの教材を体験しました。

問いかけを変えれば様々な年齢や場所で使えること、導入にも振り返りにも活用できることなど、講師が沖縄県や長野県で実施した例も紹介しながら、LAB to CLASS教材の活用方法を学びました。

◎LAB to CLASS教材の見本展示

教材の中から、室内で実施できる11種類の教材を紹介し、LAB to CLASS教材の企画意図やプロジェクトの狙いを紹介しました

【展示教材】

プランクトン模型をつくろう/実物大のイルカをつくろう/海へ!水てき君の大冒険/お魚のごはん/干潟ジグソーパズル/サンゴ礁ジグソーパズル/どーなる?コーラル〜サンゴ生き残りゲーム/餌の餌の餌は何?/海の不思議な仲間たち/海の生きもの椅子取りゲーム/プラスチックを探せ!(作成:JEAN)

 

◎グループミーティング

Project Design Mapを活用し、本質的な問い「何を伝えたいか?」「このプログラムを通して、参加した子どもたちにどんな行動を生み出したいか?」を考えます。ポイントは、一方的でなく、関わるすべての人にとってワクワクするものであること。LAB to CLASSとパートナーを組むこと、生物や国語などアカデミックな学びがあること、自分たちがワクワクすること(新しい教材も生み出せる!)、協力者にフィードバックがあること。すべてが繋がっていくことに気付く瞬間です

 

◎プログラムづくり

伝えたいテーマが決まったら、次は形にしていきます。そんな時にLAB to CLASS教材のアイデアが良いヒントをくれます。元の教材を活かしながら、クイズ形式や紙芝居風にアレンジするとどうなるかな?と一工夫。

最後まで「本質的な問い」を考え、実現させるための手法を模索していたのは高校生チーム。海が好き、海のことを知りたい、環境問題を何とかしたい、そんな思いを持つ4名の高校生です。山藤先生も一緒になって考えます。他のチームからもアドバイスをもらいながら、大人と“共に”つくっていく。既にこの場が「PBL(Project Based Learning)」になっていました。

指導実践

★「海の物語をつくる」をテーマにしたチームは、子どもたちが即席ペープサート(紙人形)をつくり大盛り上がり。楽しそうに物語を創作したり、「この生きものはこんな形なんだ!」と驚いている様子が見られました。今後の課題は、「発表の時間配分」でした。

★高校生チームは、「環境にやさしい行動ができている?」をテーマに○×ゲームを行いました。親子で一緒に、普段の行動を思い出しながら、出された質問に答えていきます。環境にやさしい選択をしたら、カードがもらえる仕組みも。身近な問題を取り上げている分、親子の話も盛り上がりました。改善点は「問題数を絞る、エビデンスを伝えるスライドをつくる、問の質を上げる」などが上がりました。

★水の循環に着目し「水ものがたり」をテーマにしたチーム。身近な「水」をテーマにしているので、子どもたちの質問から会話が広がり、とても良い雰囲気でした。「森から海まで繋がっていること」「水は循環している(一周まわって戻ってくる!)こと」に、子どもたち自身が気付いたことが印象的でした。

★LAB to CLASSの2教材を活用したチームは、最初に《海の生きもの椅子取りゲーム》のカードを使って、名前当てゲーム。その後、《サンゴ礁ジグソーパズル》を行うと、「僕のクジラがいた!」「私(の生きもの)はここにいるんだ!」などと自分が持っていたカードの生物に愛着が湧いたことを示す反応が見られました。この興味を次の行動につなげるためには指導者が掛けた「1か月後に(その生きものについて)教えてね!」の言葉もポイントです。

無事に全プログラムが終わりホッと一息。それぞれのプログラムを振り返りながら、「次に実施するなら・・」という視点で話し合いました。皆さん充実した様子で達成感に溢れています。実施者が楽しめることも大事なポイント! PBLデザイン手法を活かして、海を学ぶ場を身近なところから広げていってほしいと思います。

実施後の感想

9時から17時までという長丁場なワークショップでしたが、途中でキッズワークショップの様子を見学したり、各チームの進捗共有とアドバイスを挟んだことが良い刺激となり、集中力が途切れることなくどのチームからも非常に魅力的なプログラムが生まれました。実際に実施することで反省点や改善点が明確になり、また振り返りを共有することで「次は自分たちで実践できそう」「実際の授業で使ってみます」など、次につながるコメントもいただきました。

「誰でも、どこでも、海を学ぶ場をつくることができる!という実感を持ってもらう」という本ワークショップの目的は、参加者にその面白さ、必要性とともに十分に伝わったように思います。今回のワークショップをきっかけに、LAB to CLASS教材が様々な場所で活用され、海のPBL(project baced learning)が広がっていくことを願います。  (文責:川端潮音)

 

「事業報告書(PDF)」はこちらからご覧いただけます。

[ 実施概要]

■実施日:2019年11月24日(日)
■場所: 新渡戸文化学園アフタースクール 10 号館(東京都中野区)
■対象者:学校教員・指導者,教員・指導者を目指す方(学生含む)
■参加費:無料(要事前予約)
■主催: LAB to CLASS プロジェクト(特非 海の環境教育 NPO bridge)
※本イベントは、海と日本 PROJECT (日本財団) の一環で実施しま した。
■協力: 学校法人新渡戸文化学園 ,未来教育 confeito, 海辺の環境教育フォーラム,一般社団法人JEAN
■後援: 公益社団法人日本環境教育フォーラム,