コラム
【活用事例】エジプト版「サンゴ礁ジグソーパズル」完成!
公開日:2018.07.24
しゅわわ
LAB to CLASS教材をカスタマイズする
エジプトのハルガダ市。紅海に面した世界有数のダイビングスポットであるこの地で、青年海外協力隊として子どもを対象とした環境教育プログラムの企画運営を行っていた2016年。たまたまFacebookでシェアされていたLAB to CLASSのサイトに出会いました。
紹介されていた教材に一通り目を通し「なるほどこういった視点もあるのか!」と参考にさせてもらいました。
なかでも、とくに惹かれた教材は『サンゴ礁ジグソーパズル』。
けれどそのまま用いるのでは芸がない。もっとエジプトらしさを盛り込みたい!さらには海以外の環境問題についても理解を深められるつくりにしたい!と考え、一から自分でイラストを描いてみることにしました。
しかし、1.2m×1.8mのイラストを描く作業は想像以上にハードで、しかもできあがった教材を使い込めば使い込むほど、「ここをこう変えたらもっと伝わりやすくなる!」という気づきも生まれます。結果、何度も教材を手直しし、そのたびに参加者の反応が大きく変わるという光景を目の当たりにしました。
その過程をここに紹介することで、教材をブラッシュアップしていくということの大切さを改めて考えてみようと思います。
ブラッシュアップの過程
【その1 自分で描いた環境パズル】
エジプトの環境問題の現状について、環境庁の上司に細かくヒヤリングし、彼らが問題視している環境問題(落書きによる景観被害、騒音の問題など)をパズルの中に多く取り入れることにしました。
工夫した点は、白黒の線描きのみにしたこと。地域によっては気軽にカラープリントが出来ない現状があるからです。これならば、旧式のプリンタでも気軽に印刷できます。
[最初の試作]
A4サイズのイラストが36枚分(縦6枚×横6枚)。厚紙に貼ってパズルにしてみるとめちゃめちゃ重い!
さらに、伝えたいことが整理しきれていないので、要素を詰め込み過ぎという印象もあります。
実際のプログラムでの持ち時間はだいたい40分ほど。パズル自体はエジプト環境庁の上司にも好評だったのですが、ワーク導入とパズルを並べることに時間を費やしてしまうと、まとめやふりかえりを充分にする余裕がありません。
【その2 要素を整理した環境パズル】
[試作その2]
要素を整理し、難易度を下げたことで、パズルを並べる時間が大幅に短縮されました。パズルの外周に額のように色を付け、海の部分だけを青く塗って目印にしたことも時間短縮の要因となりました。プログラムの時間配分に余裕ができたことにより、参加者同士で気づきをシェアする時間が多く持てるなどの利点が生まれました。
【その3 カラー版環境パズル】
エジプト環境庁のパソコンに画像作成ソフトが導入されたのを機に、パズルをフルカラーにして、ポスターのようにたくさん刷って配布してはどうかと上司に相談しました。
これまでのパズルを使ったプログラムが高評価だったので、企画はすんなりと承認されました。
[カラー版パズル]
量産するにあたって、ファシリテーターがいなくても教材だけで成立するものを作る必要があります。そう考えてふたつの点を改良しました。
ひとつめ。
使い方に関しての簡単な文章を現地語で表記しました。
「パズルを完成させたら、絵のなかから環境にいい行動と悪い行動を探してみよう」
この問いにより、教材の意図が明確になります。
ふたつめ。
気づきが深まるように、パズルのピースの形を描かれている絵に合わせて変えてみました。
実際にパズルをする人の気持ちになり、どのような形で図案が浮き出てきたら、気づきに繋がりやすいかと考えました。
【その4 異言語学習の教材としての活用】
実際の授業だけでなく、さまざまな人の意見を聞くことが大切だと考え、プライベートでもたくさんの人に教材を試してもらいました。
とある日本語学習機関の方に見てもらったことがきっかけで、現地語だけでなく英語での表記も加えることにしました。
これによって、『環境教育』という目的以外にも、『英語学習』として教材を使うことができます。
たとえば、「絵のなかの出来事について英語で説明しよう」というルールでワークをします。
「He is throwing the gavage.」
「There is dirty sky because...」 など。
英語学習のニーズが高まっているエジプトにおいて、とてもメリットの多いアイディアだと感じました。
環境教育に対し熱心に時間を割く学校は、実際にはあまり多くありません。しかしこのような工夫によって、『英語』という教科で教材を使うことができるという変化がありました。
【その5 裏面に質問を書いた環境パズル】
友人から、パズルのピース裏面に簡単な質問を書いてみてはどうかというアイディアをもらいました。参加者は、パズルをする前にこれらの質問について考えます。すると、パズルを完成させることだけに注力してしまいがちな参加者が、イラストをじっくり観察するようになります。それによって気づきも深まるという仕掛けです。
このアイディアは、ファシリテーターのスキルに関わらず(ファシリテーターがいなくても)参加者に気づきを促せるということで、大好評でした。
たとえばこのイラストにはこの質問。
クラゲを食べているのかなと思ったら、、
ビニール袋だ!という感じです。
LAB to CLASSの教材に出会ったことで、実施する場に適応したものに教材(プログラム)をカスタマイズする大切さについて学ぶことができました。
どんなに優れているプログラムや教材でも、“すべての場面に適合するもの”というのは存在しないと私は考えます。
参加者の年齢、人数、屋内か屋外か…その都度、状況によって臨機応変に手を加える必要があるでしょう。
実際に、教材に手を加えていくことで、参加者の能動的な参加が促進されるのがわかりました。
私が作成した教材のデータや使用法はブログやYoutubeで公開しています。どうぞご自由にお使いください。多くの方に活用していただけたら、嬉しいです。
*執筆者プロフィール* 1978年生まれ。美術大学を卒業後、個人で創作活動を続ける。その後、保育士の資格を取得し、こどもアトリエ『しゅわわの創作工房』を設立。2015年10月より青年海外協力隊、環境教育隊員としてエジプト環境庁で活動する。帰国後は、国内外で自作の環境教育紙芝居の読み聞かせをしている。『しゅわわの環境教育』で検索。http://blog.livedoor.jp/shuwawa/
<LAB to CLASSプロジェクト事務局より>
LAB to CLASSは,お使いいただく環境や状況に合わせて,当教材をアレンジ,カスタマイズしていただくことを推奨しています。アレンジして新たに作成した教材や,教材を活用した授業の実施報告を普及される場合は,ぜひ,LAB to CLASS教材の普及活動にもご協力いただけると助かります。LAB to CLASSの教材を参考にした旨や,当サイトのURL等を添えていただけますと嬉しいです。
また,LAB to CLASS教材を活用された方は,よかった点、むづかしかった点、参加者の反応など、簡単でもコメントいただけるとうれしいです。お待ちしております。