コラム
サンゴマップキャラバン奄美沖縄編~2018秋
公開日:2018.10.18
川端潮音(LAB to CLASSプロジェクト)
日本のサンゴはどうなっている?
今年は、サンゴ礁生態系保全の国際協力の枠組みである国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI)が指定した3回目の『国際サンゴ礁年』。日本でも環境省主導により全国各地でさまざまなイベントが行われています。
私が参加した『サンゴマップキャラバン』もそのなかのひとつ。
海が好き、サンゴが好き、自分たちに何かできることはないのだろうか?
そんな想いを持つメンバーが集まり、日本のどこにサンゴが生息しそれらはどのように変化(増減)しているのだろう…という基本的な情報を集めるために2008年に開始した『日本全国みんなでつくるサンゴマップ』の実践・普及を目的として、南日本の海岸を巡る23日間の旅に出ました。
飛行機から鹿児島県桜島を望む
こんなにサンゴが生き生きしているなんて!
わたしが訪れたのは、奄美大島、加計呂麻島、与論島、沖縄本島、石垣島、西表島。
各地でキャラバン乗組員と合流し、サンゴマップにまだ載っていない場所を中心に、地元の方からも情報を得て調査ポイントを決めます。はじめて訪れる海にドキドキしたり、乗組員と「本当にここにサンゴがいるのか・・?」と話し合ったり。それでもえいっ!と海中に入ると、これまで目にしたことのない、素晴らしいサンゴ群集に出あうことがありました。
光が差し込み、カラフルで魚も多く、楽園のような場所。
穏やかな湾内に突如現れた場所、とても神秘的。
「白化した後はどうなっているのだろう・・」
もちろん綺麗な場所ばかりではありませんでした。
奄美群島から八重山諸島にかけては、2016年、過去最大級となるサンゴの大規模白化が起こったところです。(2017年に開かれたサンゴ大規模白化緊急対策会議の記録が残されています。環境省のサイトより閲覧可能です→https://www.env.go.jp/nature/coral/coral-bleaching/index.html)
以前はサンゴがたくさん生きていたんだろうな、と感じる場所もたくさんありました。死んだサンゴに藻が生えていて、暗く静かな雰囲気を感じたり、その藻を食べる魚や小さなサンゴ群体を見て、これからの復活を祈ったり。複雑な気持ちを抱きながらも、ただただその現状を記録に残し、これからのサンゴの成長を願う日々でした。
サンゴが死んだ海は茶色の景色になっていた。
過去にここを訪れたことがある人は、あまりの変化に言葉を失っていた。
よく見ると、10㎝に満たない小さなサンゴが育っていた。
わたしが決意したこと
わたしは3年程前まで、琉球大学の学生として日々このサンゴが生きる海に潜っていました。ダイビングクラブでの思い出が詰まる場所であり、さまざまな生物やその生態から元気をもらった場所であり、そして多くの不思議が詰まる場所。最後に卒業研究で向き合い続けた海もここでした。
当時から特にサンゴの白化には大きな危機感を抱いていました。白化にはさまざまな理由があれど、大きな要因である「気候変動」に向き合わなければ、いつか本当にこの素晴らしい海がなくなってしまう・・・。そんな思いから沖縄を離れ,大都会・東京に身を移し、多様な分野の人とパートナーシップを組み、この問題に取り組むことを決意しました。海に浸かって遊んでいる方が好きだけど、今行動しないと、後悔する時がくるかもしれない。自分の中で、大きな大きな決断でした。
幸いなことに、東京に来たからこそ出会えた心強いメンバーが今ではたくさんいます。学生時代の繋がりもしっかり残っています。「未来の海のために、何ができるのだろう・・」と考えるたびに溢れ出るアイデアを、これからもさまざまな人たちと、楽しみながら取り組んでいこうと思います。わたしはいつまでも、カラフルで命溢れるサンゴ礁の海を見ていたい。「サンゴマップキャラバン」は、そんな原点を思い出す大事な旅となりました。
海に潜っていくわたし。たかさん撮影/沖縄本島にて