コラム
【活用事例】イルカ教材で楽しく形態学を学ぶ
公開日:2017.08.29
栗原 望(宇都宮大学農学部生物資源科学科)
大学のアグリカレッジでイルカの授業!
最近の大学では、高校生を対象とした学習プログラムがあります。宇都宮大学農学部でも、スーパーサイエンスハイスクールのほかに、農業関係の高校を対象に“向学心の向上を図ることを目的”として、「アグリカレッジ」と銘打った講義や実習を行っています。
向学心がうんぬん・・・といった小難しい文言はさておき、学びは楽しむことが大切です。わたしは動物の体の構造や機能を調べることが専門なので、アグリカレッジの講義内容も「形態学」です。
形態学はじつに面白い学問なのですが、理論が先行すると聴く側はたいてい飽きてしまいます。そして2時間半の講義時間も、人間が連続して集中できる時間を超えています。さてどうしたものかと考えていたちょうどそのとき、偶然LAB to CLASSの 「実物大のイルカをつくろう!」の存在を知り、これだ!と思ったのです。
イルカをつくるのに必要な型紙は、WEBサイトから無料ダウンロードできるようになっていて、なんとも便利。これを使って、形態学でもっとも重要な「相同性の概念と進化」の話をしよう!と決めました。
イルカづくりで実感した「相同性の概念と進化」
ということで、実際にやってみました。まず、相同性と進化の話を1時間程度。話に飽きてきたところで、プラスチックシートを使って小型のイルカをつくってもらいました。そして、イルカに骨格を描き込んでもらい、イルカの胸びれとヒトの腕が同じ要素からできていることや、後肢がなくても骨盤骨はあることなどを確認。所要時間は、事前に型紙どおりに切っておいたプラスチックシートを貼り合わせ、骨の絵を描く…という作業で1時間半くらいでした。
進化の過程で体の形が変化しても基本構造は同じ! それを「イルカの模型」を通じて、実感してもらいました。高校生も非常に楽しそうに、そして真剣にイルカの製作に取り組んでくれました。イルカのおかげで充実した講義になったのではないかと思っています。
5人の班で作業。実物大ではなく4分の1に縮小しましたが、高校生なので手先も器用で、問題なくできました。
空気を入れる作業は、吻の部分にストローをさして、自分たちの息で膨らませました。ドライヤーがなくてもできますね。
ダウンロードしたイルカの解剖図を見ながら、片面に骨の絵を描いて、骨の構造を理解しました。
少し講義を加えて、前肢(人間の手)と胸びれの相同性など形態学の基礎を学びました。
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