コラム
丑の日につき・渾身の一筆!!(2)
公開日:2017.08.06
渡辺未知(海辺のインタープリター/絵本作家)
土用のウナギは絶滅危惧種?!
今回は、ウナギの稚魚の減少に追い打ちをかけているのが、じつは「土用の丑の日」だというそのわけを…。
今は、土用の丑の日に、日本国民一億総うな丼をまかなう量の大人のウナギなんて川で採れないから、帰ってきた稚魚を海で採って養殖してる訳ですけど、日本近海で採れる稚魚は、数が減っているだけでなく、高度な養殖技術を用いないと夏の”丑の日”までに生育が間に合わないらしいです。
なので、わたしたちの欲求を満たすため、台湾で採れるニホンウナギの稚魚もたくさん輸入してきました。日本の企業が高く買ってくれるんだったら、台湾の人は一生懸命採る。儲かるから、みんなどんどん参入してがんがん採る。なので向こうでも減りすぎて、とうとう台湾は、稚魚の輸出を禁止にしました。でも、香港に出荷すれば、密輸業者が日本企業に売ってくれる。香港は、日本・中国・台湾・韓国で結ぶニホンウナギの資源管理の取り組みに参加していないらしい。今の日本の流通のしくみだと、今目の前にある”日本産のウナギ”が、養殖されたのはたしかに日本のどこかでも、稚魚がどんなルートで入ってきたものなのかは、パッケージを見ても分からない。そこまで記載を義務付けられていないから。
だから、もしかしたら丑の日は、出回っているウナギが密輸ニホンウナギ稚魚だった可能性が、一年で一番高い日なのかもしれない。
台湾では90年代に入ってなんと“90%”ものニホンウナギが減っています。なので、台湾政府は絶滅危惧種リスト(レッドリスト)で「最も絶滅の危険度が高い種」に指定することにしたそう。もしかしたら近い将来、漁獲量を規制することにもなるかも?でも、日本人がお金出すんだったら、密輸は止まらないだろうな。
丑の日には、あんこたっぷりの土用餅!
わたしは、丑の日にはウナギ食べないけど、家族に何かお祝いするとか、自分がここ一番どうしてもがんばらなきゃいけない時とか、年に数回は、ウナギ食べます。だって旨いんだもん。大好きだしーーー!!!
ニホンウナギが減っているのはいろいろな原因がからみあっているわけだけど、もし自分に出来ることがあるのなら。
一年に一度ガバァ~~~~っと全国民でウナギ食べて、ニホンウナギがいなくなってしまうくらいだったら、わたしゃ丑の日には、あんこたっぷりの土用餅を口いっぱいにほおばってニコニコします。(^H^)
参照リンク(外部サイト)
・ウナギレポート 中央大学法学部/ウナギ保全研究ユニットKaifu Lab
・”白いダイヤ”ウナギ密輸ルートを追え! NHKクローズアップ現代+
注:「ニホンウナギ」は2013年に環境省のレッドブック絶滅危惧種1B類(ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの。
クマタカとかライチョウなどと同分類)、2014年にはIUCN(国際自然保護連合)レッドリストEN(前出「絶滅危惧種1B類」と同カテゴリ)に指定されています。
http://www.env.go.jp/press/files/jp/105449.pdf(P13【汽水・淡水魚類】)
http://www.iucnredlist.org/details/166184/0