コラム

不思議な植物、マングローブ(2)

公開日:2017.07.11

海の生き物たちを育てる森

マングローブの森では、魚や貝、エビやカニ、鳥など様々な生き物がくらしています。これらの生き物たちの暮らしを支えているのは、マングローブの落ち葉です。

森の中で大量に落ちた枯れ葉は、まず巻貝やカニなどに食べられます。その糞はやがて海水に溶けて、小さなプランクトンの餌になります。落ち葉が源になってプランクトンが増えると、それを餌にする小魚や小エビなどが増えます。潮が満ちたマングローブには、無数の小魚が集まります。そして今度はそれらを餌にする大きな魚や、鳥が集まってきます。ときには大きなサメが、潮の流れによって森の奥まで入ってくることもあります。

一生をマングローブの森の中でくらすもの、子どもの時期だけすごして成長すると出ていくもの、エサ場として利用するものなど、そのかかわり方は様々ですが、多くの生き物にとってマングローブの森はたいせつな場所です。

クロホシマンジュウダイ(左)、ヒメツバメウオ(右)。観賞魚としてもおなじみの魚で、幼魚の時期をマングローブの森の中ですごします。

キバウミニナ。長さ10cm以上になる大型の巻貝。マングローブの落ち葉が大好きです。

 

マングローブは今…

日本のマングローブのほとんどは、沖縄県にあります。北海道~九州に住んでいる人たちにとっては、マングローブを見たりその大切さを考えたりすることは、ほとんどないかもしれません。しかし地球全体の環境の中で、マングローブはとても重要な役割をはたしています。

そのマングローブが今、世界中でものすごいスピードで姿を消しています。その原因の多くは、伐採や埋め立てなどの土地開発、戦争など人間の活動によるものです。マングローブ林を伐採して作った養殖場で育てられたエビや、マングローブの炭を大量に輸入している日本にとっても、無関係なことではありません。

マングローブが消えた後では、陸地では塩害や砂漠化が進み、海ではサンゴが死滅して魚が姿を消すなどさまざまな問題が起こっています。また南の島では、防波堤の役割を果たしていたマングローブ林が消えて、陸地が波で削られる被害も深刻になっています。

失われたマングローブの森をよみがえらせるために、今、世界中でたくさんの人たちが植林などの取り組みを行っています。人間の手で壊してしまった自然は、人間がもとどおりにしなければなりません。今わたしたちに何ができるのか、何をしなければいけないのかを、みんなで考えてみましょう。

ミナミトビハゼ。水の中が、あまり好きではない変な魚。マングローブの根元を跳ね回っています。

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