コラム

不思議な植物、マングローブ(1)

公開日:2017.07.04

マングローブを知っていますか?

南の国の暖かい海には、「海の森」があります。潮が満ちてくるとすっかり海になってしまうところで、まるで水に浮かんでいるような姿になる不思議な森、それがマングローブの森です。マングローブとは、熱帯から亜熱帯の、陸と海の境目あたりで生きている植物のことです。木や草、シダの仲間など、全世界で100種類以上の植物がマングローブに含まれます。

サクラの仲間には、ヤマザクラ、オオシマザクラのように、名前に○○ザクラとつくものがあります。しかし、マングローブは植物の種類の名前ではないので、○○マングローブなどと名前にマングローブがつく植物はありません。高い山にある植物をまとめて高山植物とよぶのとおなじように、満潮になると海水が満ちてくる所にある植物を、まとめてマングローブとよびます(※)。

陸上の植物が生きていくことができない厳しい環境の中でも、マングローブは力強く育ちます。そしてその森の中では、貝やカニ、魚や鳥など様々な生き物たちが、潮の満ち干のゆっくりとしたリズムの中でくらしています。

 ※それぞれの植物ではなく、森全体をマングローブと呼ぶこともあります。

不思議なからだのしくみ

●根

 マングローブの森に入ると、まず目につくのは不思議な形の木の根です。幹の途中からタコの足のように伸びている根、人の膝のような形をして地面から突き出している根、たくさんのタケノコが生えているような根。これらの根は、マングローブの種類によって形が違います。やわらかく酸素が少ない泥の中でも、倒れないように体を支えたり、呼吸をしたりするために、それぞれの植物が独特の根を発達させたものと考えられています。

タコノアシのようなヤエヤマヒルギの支柱根。下から突き出しているのはマヤプシキの呼吸根

オヒルギの膝根(しつこん)

●塩

ほとんどの植物は、塩が苦手です。海水をかけ続ければ、たいていの植物は枯れてしまいます。しかし、多くのマングローブは、葉から塩を出したり、葉の中に塩をためて葉を落としたり、また体のなかに塩が入ってくるのをふせぐ仕組みをもつなどして、海水に耐えて生きています。

 ●実

多くの植物は、種子が地面に落ちてそれが芽生えて苗ができます。しかしマングローブのなかでもヒルギの仲間は、実が木についている状態で種子が芽を出して大きくなり、木にたくさんの苗がぶら下がったような状態になります。この姿が、まるで動物が卵でなく子どもを産む「胎生」のように見えるために、「胎生種子」とよばれています。胎生種子は、親の木から落ちると水の流れに乗って旅立っていきます。流れ着いた先で下から根が、上からは葉が伸びて、やがてそこで新しい森をつくります。。

オヒルギの胎生種子

★続きは次週、掲載予定★