コラム

石垣島、サンゴ白化の今~2017冬

公開日:2017.02.13

自然サイクルなのか、大規模白化の始まりか……私たちの行動が未来を決める

石垣島に暮らす私にとっての2016年の夏は、とにかく暑くそして長いものでした。

石垣島は八重山列島に含まれ、宮古列島も合わせて先島(さきしま)諸島と呼びます。北緯26度の沖縄本島に対して、先島諸島は北緯24度とさらに南の島々なのです。

2016年、その先島諸島のサンゴ礁で異変が起きました。サンゴの大規模な“白化現象”です。

白化は、サンゴ体内に共生する褐虫藻が30℃を越えるような高海水温などによるストレスにより逃げ出し、色が抜けて白くなる現象です。その状態が続くとサンゴは死んでしまいます。白化はサンゴが緊急事態であるサインです。

先島諸島海域では2016年6月~8月の平均海水温が観測史上最高値となり、その高海水温により広範囲でサンゴの白化現象が起きました。

しかし本来は、夏場の高海水温を一気に下げてくれる自然現象があるのです。台風です。台風は海水を深いところからしっかりかき混ぜ、水温を下げる役目をします。適温になればサンゴも白化から回復します。

2016年は、その台風にもまた異変が起きていました。台風1号の発生が7月と例年に比べとても遅く、その後は次々に本州に接近や上陸し、東北や北海道で大きな被害をもたらすなどしました。沖縄としての接近数は7個と平年並みで、台風の発生が遅かったことにより始まっていた白化現象は、その後の台風接近で水温が下がり終息し、サンゴも回復に向かいました。しかし、これは沖縄本島以北の話です。先島諸島への台風の接近は、9月に入るまでなかったのです。結果として高海水温の状態が長く続き、大規模白化へとつながってしまいました。

石垣島と西表島の間に広がる国内最大のサンゴ礁海域である石西礁湖(せきせいしょうこ)では、環境省の調査により12月の時点でサンゴの死滅が7割に及んだとされています。私自身も、美しくどこまでもサンゴが続いていたいつものフィールドが真っ白に変化し、やがて荒れ果てた茶色の風景に変わり果てていく様を目の当たりにしました。

夏場に海表面の水温が高くなるのは毎年のことなのですが、これまでと違い2016年はある程度の水深まで水温が高いことも特徴でした。多少の波や潮の流れがあっても、水温の高い海水が行ったり来たりするだけなので、今まで安泰だった場所のサンゴが軒並み白化した末、死んでしまいました。海が広く深いところまで温かくなっていること、台風の発生個所の北上やコースの変化など気候変動の影響がサンゴ礁環境に及ぼす影響は顕著です。

白化もまた自然のサイクルのひとつだから心配いらないという声もあります。しかし、近年では大規模な白化現象が10年と間を空けず連続しており、合間にはサンゴを餌とするオニヒトデの大発生があり、また赤土流出や生活排水で水質もよいとは言えません。サンゴが大規模白化から立ち直る前に、次々とダメージが積み重なっているように私には感じられます。

何年か先、豊かに回復したサンゴを前に「2016年の白化は大変だったねえ」と言えるのか、「思い起こせばあの年の白化現象がすべての始まりだった」と失われたサンゴ礁を思い起こしているのか。今、ここからの私たちの行動が未来を決めるのだと私は思います。