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【事業報告】盤洲干潟で私立中学校の体験学習を実施

公開日:2018.10.01

江戸時代、東京湾はみ〜んなこんな海だった?!

8月末,東京都墨田区にある安田学園中学校2年生の『探求・ライフスキル学習』授業の一環として、2日間の干潟の体験学習プログラムを行いました。

フィールドは千葉県木更津市にある「盤洲干潟」。小櫃川河口から東京湾へと続く広大な干潟は、東京湾最大であり、全国的に見ても今では稀となった“川から海へと繋がる干潟の原風景”が残る貴重な場所です。(残念なことに、東京湾をはじめ日本の干潟の河口部は、ほとんどがすでに埋め立てられてしまっています)

 学習テーマは『自然(海)と人間生活について考えよう』

1日目と2日目の朝は、干潟を五感で感じ、さまざまな生物に出会いました。

ゆっくり深呼吸してみよう!気持ちが落ち着き、心地よい潮風を感じながらスタートです。

「東京湾の干潟、水がとってもきれい!そして水がすっごく熱いね!」 想像と異なる盤洲干潟の様子に興味津々の生徒さんたち。

ただ砂の上を歩いて見ているだけでは、さまざまな生物には出会えません。干潟にすむ多くの生きものにとって干潟の表面に出ることは、鳥や魚の餌にされる危険性が高まるので、生物のほとんどは砂の下に隠れています。

今回はスコップやザルを使い、砂を掘ったりふるったりしながら生きものを探していきました。
※参考:LAB to CLASS教材【地底生物を洗いだせ〜干潟の生きもの観察~

 

 

 ヤドカリはあまり隠れていないね! すぐに見つけられるよ!

小さな二枚貝が出てきた!

 この丸いぷにぷにしたものは何?

 

巻貝がたくさん集まる場所を掘ったら、エイの死骸がでてきたよ! ほとんど骨になっている!!!

 

疑問→仮説→行動(観察・実験)

2日目は調査学習を中心に実施。干潟で疑問に思ったことに対し、「○○かもしれない」と仮説を立て、観察や実験をしながら検証を行います。LAB to CLASSの教材をアレンジしたような実験もいくつかありました。

砂もぐり選手権〜干潟の生きもの観察~】の方法を使って二枚貝の水管の仕組みを観察したチームや、【食いしん坊は誰だ~餌で釣る干潟の生物~】のアイデアを活かして、肉食の巻貝がどのように餌を見つけるかを実験したチームも。

他にも以下のような多彩なテーマが生まれ、生徒さんたちは時間ギリギリまで実験や観察に集中していました。

・砂に潜るのが早い貝は?

・アサリの模様の違いは陸からの距離、深さで異なるか

・二枚貝はなぜ水をきれいにするのか

・スナモグリはどうして砂に潜るのか

・なぜ前に歩くカニがいるのか

・貝が出す管の秘密

・プランクトン図鑑をつくる

・巻貝の巻き方は左巻きか右巻きか

・貝の水管の出し方

・二枚貝の大きさで浄化能力の速さは違うのか

今回得た記録を元に、これから約2か月の授業のなかで、調べ学習やまとめを行い、11月に開かれる文化祭で発表するそうです。

満月を見たら、干潟で暮らす生きものを思い出して!

「東京湾に、こんなにもさまざまな生きものがいることを知っていましたか。干潟はとても豊かな場所で、生物同士がつながりあって生きています。昔は東京湾にもたくさんの干潟があり、生まれてしばらくプランクトンとして海のなかを漂って暮らす貝やカニなどの子どもたちが、流れ着いて大人になる場所がたくさんありました。でも、今はほとんどの干潟が埋め立てられてしまい、彼らの住処がどんどん減って、生物の数も激減しています。この貴重な自然があることを忘れずに、大人になっても大事に守ってくださいね」

2日間にわたり講師を務め、生徒さんたちの研究にアドバイスをくださった「干潟の神様」こと風呂田利夫先生(東邦大学名誉教授)のまとめの言葉は、干潟で出会ったそれぞれの生きものの姿と重なって、きっと多くの生徒さんの心に届いたことと思います。

そして最後に…「海の教室」を率いた我らがリーダーの人見道夫さんは、なぜか海を見ていた生徒さんたちに声を掛け、陸を向かせてひと言…

「昨日、満月がきれいだったのを見ましたか? 今、みんなには海は見えません。普段の生活でも海は見えません。でも、満月は海の満潮・干潮と深い関係があります。満月を見たら、たくさんの生きものたちが暮らしていたこの干潟を思い出してください。自然を守るためには、"想像力”が大切なんです」

台風の到来や猛暑の影響など、さまざまな懸念事項が山積みだった今回の「海の教室」でしたが、地元の方の多くのご協力もあり、大きな怪我や病人を出すこともなく無事に終えることができました。

「この海を忘れないでほしい」—-プログラムに関わったスタッフ全員が想いを込めた、熱〜い2日間でした。

LAB to CLASS指導者資料【FACT SHEET干潟Ⅱ 干潟を彩る多様な生きもの】より

カニの子どもは、生まれたときには親とはまったく違う形で、海のなかを漂って暮らしている。
LAB to CLASS指導者資料【FACT SHEETプランクトンⅠ プランクトンって何もの?】より

 

[ 実施概要]

◆実施日:2018年8月26・27日(日・月)
◆実施校:学校法人 安田学園中学校 総合コース2年生
◆体験者数:109名
◆講師:東邦大学名誉教授 風呂田利夫
◆プログラムアドバイザー:帝京科学大学教授アニマルサイエンス学科 古瀬浩史
◆協力:金田漁業共同組合・木更津市観光振興課・木更津市観光協会
◆株式会社JTB

※当日の様子は,千葉テレビの夕方のニュースで紹介されました。