コラム

新しい防波堤釣りと未来(2)

公開日:2017.07.25

逆転の発想「管理釣り場」

前回、防波堤釣りの楽しさと問題にふれました。今回は、各地で生まれている「海の管理釣り場」について紹介します。これは、厳格なルールと徹底した管理のもと有料で防波堤釣りを楽しもうという、逆転の発想から生まれたシステムです。防波堤は、心から魚釣りを楽しめる場所として機能し始めているのです。

先日、わたしが非常勤講師をしている国際自然環境アウトドア専門学校の「実習」として、新潟県上越市直江津港の「管理釣り場」(*)で釣りをしてきました。

この防波堤はこれまで立ち入り禁止でしたが、無断で釣りをする者が多く問題になっていました。それを2016年7月、NPOが管理する有料の管理釣り場として開放したのです。直江津港は「改正ソーラス条約**」が適用されている国際港で、原則として今でも港内は一般立ち入り禁止です。しかし第3東防波堤の管理釣り場のみ、例外となっています。

釣りの開放区域への案内表示

釣り人でにぎわう直江津港第三東防波堤

気持ちのいい環境に釣果以上の満足度

さて、釣り当日の集合は早朝5時。学生にはつらい時間ですが、定員を超えると防波堤への入場が制限されるので、あえて早朝出発としました。けれど講師の心配は無用だったようです。全員張り切って集まってくれました。

使用料は、大人1名800円。使用者名簿を1人ずつ記載し、ライフジャケットを着用して初めて入場が許されます。この日は蒸し暑く、雨もポツポツというお天気。しかも平日なのに、たくさんの人が思い思いに竿を出していました。われわれも勇んで釣り始めましたが、気合いを見透かされたようで、お魚さんは釣れてくれない―。ルアー釣りが得意な学生がひとり気を吐いて、カサゴやムラソイを釣り上げてくれました。

この日の夜からキャンプで、お魚が釣れないと晩ご飯のオカズはない―。なので、初めての学生も真剣です。もちろん講師もあの手この手でお魚にアプローチを続けました。終盤でわたしがフクラギ(関東ではイナダと呼ばれるブリの若魚の地域名称)を1尾ゲット。カサゴやムラソイとあわせれば、なんとかおかずになりそうで、一同「ほっ・・・」。

防波堤はキレイで、ごみひとつ落ちていません。禁煙だから吸殻もない。安全もルールも厳格に守られているので、とても気持ちのいい釣りができました。満足度は釣果以上です。この800円を高いと感じるか当然と感じるかが、おそらく釣り人の「マナー」に対する意識なのだろうと思います。

「今夜はカサゴのから揚げと、フクラギのカルパッチョにしようぜ」。学生たちにそう予告しながら、釣り場を後にしました。

実習で釣りを楽しむ学生たち

 

釣果を手に笑顔の筆者(前列)と学生たち

 

*直江津港第3東防波堤 管理釣り場

新潟県上越市八千浦4番地 TEL: 070-4375-5452
管理者:NPO法人ハッピーフィッシング
http://happyfishing-n.jp/ (外部リンク)
同管理者のもと、新潟東港第二東防波堤、柏崎港西防波堤でも防波堤釣りができます。

 

**改正ソーラス条約

もともと、タイタニック号沈没事故を受けて、悲惨な船舶事故を未然に防ぐために制定された国際条約です。2001年アメリカ合衆国の「9.11同時多発テロ」後に、海上からのテロリスト侵入を阻止する目的で改正されました。外国船が入港する各国の国際港等に適用され、一般の港湾施設への立ち入りは厳しく制限されています。