コラム

着衣泳で水辺の安全を!(1)

公開日:2017.07.31

泳がない救助法がある?!

NPO JCUEは、「水中環境を直接見て感じることができる」という、ダイバーならではの長所を活かし、環境保全や環境教育、救急法・救助法の普及啓発に関する事業で社会に貢献しようとする団体です。

魚の専門家を招いて一緒にダイビングをするリアルな海の講演会を開催したり、親子向けの海辺の自然体験プログラムを全国で開催したりしています。

JCUEの会員は、ダイビングインストラクターが中心です。インストラクターは、救助に関しても訓練を受けています。それは、水面や水中から溺者を引き上げたり、泳いで曳航したり、まさに「泳ぐことが助けること」という訓練です。

ところが、ある日わたしたちは、「溺者が自分自身を助ける救助法がある」という噂を耳にしました。「助けるために誰も泳がないの?」と不思議に思って訪ねたのが、(一社)水難学会(旧着衣泳研究会)でした。 

「ういてまて!着衣泳」を生んだ願い

話を聞くと、この救助法「ういてまて!(着衣泳)」が生まれたのは、「あと1分、水面で呼吸をしていてくれたら・・・」という、救助隊員の願いと無念の思いがきっかけだったといいます。

消防の救助隊員の多くは、「子どもが池に落ちた」という通報で出動しても、現場に到着するとすでに救助すべき子どもの姿はなく、実際に行うのは水底の「捜索」ばかり、という経験をしているというのです。

わたしたちも、水に落ちた子どもを助けようとした親や大人が溺れてしまったというニュースをよく耳にします。

目からウロコの「ういてまて!」

そもそも人の体は、自然に浮くものなのでしょうか? じつは「人体は98%が沈むが、2%は水面上に出る」という科学的根拠があるそうです。つまり、全身の2%のうち口と鼻さえ水面に出れば呼吸ができ、理屈としては溺れることはないのです。

この「人は浮く」という根拠に基づいて導き出されたのが、「ういてまて!(着衣泳)」です。これまでは水中では脱ぐことを奨励されてきた「衣服」や「靴」も浮力体として活用。さらに、たまたま水の事故現場に居合わせた人たちも、わが身を危険にさらすことなく救助の一端を担うことができます。

「泳ぐことが助けること」と信じ、ハードな訓練を受けてきたわたしたちダイビングインストラクターにとって、「ういてまて!」はまさに「目からウロコ」でした。この出会いからJCUEでは、水難学会から認定された指導員を中心に「ういてまて!」を広める活動に継続して取り組んでいます。

次回は、「ういてまて!」の詳細についてご紹介します。お楽しみに。

(次回につづく)