コラム
学校と地域をつなげる海の学習(4)〜「里浜条例」の策定、そして今後へ
公開日:2017.11.15
鹿谷 麻夕(しかたに自然案内)
自治会が地域の教育を支える
沖縄の米軍基地所在地の自治会の多くは、立派なコンクリート2階建てや講堂のある公民館を持っていますが、浦添市の港川自治会は「事務所」と称する平屋の一部屋のみ。そんな自治会の夢は、「海の近くに体験学習施設とカヌーの艇庫をつくること」です。
2007年、自治会を中心に「うらそえ里浜ネットワーク」が立ち上げられました。ここでは数年前から市のまちづくり助成金を活用し、地元のアウトドアショップ「NEOS」の協力を得て、港川小学校の6年生にカーミージーの海でのカヌー体験を実施しています。
4年生で海の環境学習を行い、5年生では地域の歴史を学ぶフィールドワークを行い、6年生で再び海に戻ることで、地域への理解と愛を育む総合的なプログラムに広げているのです。この学校活動のすべてに、自治会長のゼンロウさんが仕掛け人として関わっています。
自治会の体験追い込み漁
中学生に説明する港川自治会長のゼンロウさん
「カヌー体験」が広げる海の資源価値
さらに港川小では、教員研修としてもカヌー体験を行っています。先生方にも体験と理解を広げ、いずれは市内全校で海の環境学習をしてもらいたいというのが自治会の目標です。
そして、他地域から観察会などの受け入れが少しずつ増える中、「これだけのニーズがあるのだから、海辺に学習施設が必要だ」ということを市に訴え続けています。実際、トイレも東屋もない海辺の道路工事現場の真っただ中で、これまでの活動を続けてきたのです。
そして里浜ネットワークでは、埋め立てに代わる海の利用法として、カヌーの活動をアピールしています。生物を傷めないレジャーとして、浅瀬の広がるカーミージーの海にカヌーは最適です。那覇からも近く、観光や修学旅行の利用も見込めます。
埋め立てによる経済効果とは桁が違う話かもしれませんが、海の自然そのものの価値を見直す、一筋の光ではないかと思います。
教員研修でのカヌー体験(2017年)
自治会にてカーミージーガイド養成講座(2015年)」
全国初?「里浜条例」策定へ!
今年、うれしい動きがありました。自治会がかねてより要請していた「里浜条例」を、市が策定する運びとなったのです。海辺を「里浜」と位置づけて条例化するのは、おそらく全国的にも例のないことでしょう。
西海岸道路の開通を平成30年度にひかえ、浦添の海はより多くの人の目に触れるようになります。そのため、自治会と里浜ネットワークでは、環境保全の理念をうたう条例と合わせて、地域における具体的な海の利用のルールづくりも検討し始めています。
海辺を「里浜」と位置づけ、地域と学校が協力して海辺を利用しながら保全につなげる試みは、これからも続きます。みなさんも一度、カーミージーの海を見に来てくださいね!
里浜フォーラムを開催(2007年)
カーミージーの環境学習
(連載終わり)