コラム

学校と地域をつなげる海の学習(3)〜子どもたちが道路計画を変えた!

公開日:2017.11.11

「反対運動」ではない開発計画変更の要請

 浦添市立港川小学校で「カーミージー探検隊」の環境学習が動き出すなか、市の西海岸開発計画も進められていました。2007年には、道路建設に伴う海岸埋め立ての環境アセスメントが始まり、自治会やわたしたちも意見書の準備等に追われました。

 ただ、ここで自治会長とわたしたちが考えていたのは、「決して反対運動にはしない」ということでした。反対は対立構造を生みます。自治会が偏った姿勢をとると、市民が自治会活動に参加しにくくなります。また学校では、一方的な立場で授業を行うことはできません。

 そこで、道路計画そのものには反対しないが、市民の憩いの場としても、また学校教育で活用する上でも、海辺の自然環境をできるだけ残してほしい、そのために道路建設に伴う埋め立て計画の変更をお願いしたい、ということを関係機関に要請して回りました。

工事前の岸辺(2008年) 

工事中の岸辺(2013年)

保護運動にまさる教育の重み

 この要請活動は、ひとつの実を結びました。当初の計画は、カーミージーの岩の前までの海岸線を、すべて一直線に埋め立てて道路にするというものでした。そして、将来その前面のサンゴ礁の大部分を埋め立てる計画図もありました。

 しかし、「子どもたちが学習に使う場所を潰すわけにはいかない」という判断が通り、カーミージー側3分の1の海岸線を残して橋梁化することに変更されたのです。橋梁化は、埋立てに比べて建設費用が何倍にも膨らみます。そうまでして海岸線を残すという結果が得られたのは、単に「自然を守れ」という主張以上に、「子どもの学習の場を奪うことはできない」ことに説得力があったからでした。教育というものの社会の中での重みを感じる出来事でした。

工事中の橋の前で観察会(2013年)

見直しが続く開発計画と今後

 やがて、西海岸開発計画は少しずつ見直されていきます。2017年現在、海岸道路の前面にあるサンゴ礁の埋め立て計画はあるものの、カーミージーのすぐ近くまであった埋め立て予定地は、橋梁化された道路の付け根の位置まで後退しました。残されるサンゴ礁の面積が増えたのです。

 この計画については、米軍那覇軍港の浦添への移設問題がからんでいて、どうなるかはまだわかりません。そして自治会では、ここでも次の手を打ち始めています。それは、やはり学校を巻き込んだ新しい海の利用でした。

ほぼ形のできた橋(2016年)

カーミージーの海草藻場(2016年)

カーミージー沖のサンゴ礁(2016年)

(次回につづく)