コラム

学校と地域をつなげる海の学習(1)〜基地のおかげで残された海

公開日:2017.10.18

基地のおかげで残された海

 始まりは2005年、知人の紹介で出会った地域の自治会長の問いかけでした。「昔に比べて貝も魚も減ってしまったこの海は、残して行く価値があるのだろうか?」

 沖縄本島、那覇市の北側に隣接する浦添市は、海に接する土地のほとんどを米軍基地に塞がれています。そのおかげで、基地沿いの海辺は開発されずに自然の姿が残された一方、基地でない海岸はすでに埋め立てられ、倉庫や沖縄電力などの事業所が立ち並んでいます。

 そんな中で唯一、市北部の港川という地域が海への出入口を残していました。それが空寿崎(くうじゅざき)。地元で通称「カーミージー」と呼ばれる岩があり、その周辺は広い浅瀬となっています。

残された海。右奥がカーミージーの岩

 じつは、この基地沿いの海岸線を埋め立てて、新しく西海岸道路を作る計画がありました。沖縄の大動脈である国道58号線は、那覇~浦添のあたりで常に渋滞しています。この解消を目的に、なかなか返還されない米軍基地を飛び越えた海側に、道路を作ることになっていたのです。

 港川の自治会長は、過去に自分の家の前の海が埋め立てられ変化したことを思うと、新しい道路と海岸埋め立ての計画には積極的に賛同できません。かといって、昔のようには豊かな海の幸が獲れず、過去に基地から流出した汚染物質が問題になったこともあるこの海は、果たしてこのままとっておく価値があるのかどうかを知りたかったのでした。

カーミージーより那覇方面を望む

海に出る人

息を飲むほどの自然豊かな海

 自治会長に案内され、初めて訪れたこの海の景色に、わたしは息を飲みました。潮の引いた広大な浅瀬には、白い砂地に緑の海草類が生え、沖側の平らな岩礁にはアーサ(ヒトエグサ)が緑の絨毯を作ります。砂地にはイモガイやクモガイ、ナマコ類が横たわり、カニが餌を探して歩き回り、水は澄んで美しい。

 自然のままの海岸線がどんどん失われている沖縄で、ここは残す価値が十分にある!とわたしは確信したのでした。そして翌年、自治会が地元の小学校に呼びかけ、地域とつながる環境学習が始まったのです。

岩礁に生えるアーサ(ヒトエグサ)

クモガイ。殻のすき間から目をのぞかせる

砂地のソデカラッパ

(次回につづく)